「いいですね、売り上げが伸びて。女の子は椎名さんが毎月メンテナンスに来てくれたら喜びますからね」
「夏帆ちゃん、焼きもち?」
「はい?」
「俺が女の子と話してたら妬いちゃう?」
「妬きませんよ。私に妬かれても椎名さんは迷惑でしょ?」
「別に迷惑じゃないよ。むしろ嬉しいかな」
夏帆は困った顔をする。
だから、その顔が傷つくんだって。俺のことが好きじゃないとその顔が言っているんだ。
「あのさ、夏帆ちゃんが思ってるよりも俺は軽くないからね」
自分でも驚くほど夏帆の存在を大事に思ってる。性欲処理程度に付き合ってた女とは完全に関係を切った。だからって夏帆の体目当てなわけではない。
「この間はごめん。ちょっとどうかしてたわ。夏帆ちゃんが俺の気持ちを信じてくれなかったから頭にきちゃって」
「…………」
「ちゃんと向き合いたいの。君と」
夏帆は増々困った顔になる。けれどそこで引くつもりもない。
「好きだよ」
だからさ、俺のそばに……。
「今横山さんと付き合ってます」
は? 今何て言った?
「椎名さん……私、横山さんと付き合い始めたんです」
俺の目を見ない夏帆の顔は真っ赤だ。
「夏帆ちゃんが?」
「はい……」
嘘だろ? この間まで男とろくに話すこともできなかったのに。
「だからもう私をからかうのはやめてください……」
からかっているわけじゃない。俺は本気なんだって。
「料理を褒められて浮かれちゃったわけ?」
「…………」
「ホテルにでも誘われたの?」
「違います」
「断れなくてもうヤっちゃったとか?」
「違います!」
夏帆の目が潤んできた。また俺は嫌われるようなことを言っている。
「そんな人じゃありません!」