待ち合わせの駅のトイレで入念にメイクと服をチェックして、横山さんと会う改札前まで歩いた。
約束の15分前だというのに横山さんは既に待っていて、歩いてくる私を見つけると安定の爽やかな笑顔で迎えてくれた。スーツ姿しか見慣れていないため、私服の横山さんは新鮮でいつも以上にかっこよく見える。

「休みなのにごめんね」

「いえ、パンケーキ好きなので楽しみです」

お昼前にカフェに着いても、休日だからか店内は満席に近かった。
元々駅は周辺に商業ビルが多く、映画館や公園もあり利用者の多い駅だ。住宅地近くにあるこのカフェは学生や主婦に人気のようだ。

「北川さんは好きなの頼んでね。今日は僕の奢りだから」

「いえ、そんな! 自分で払いますから」

「遠慮しないで。一緒に来てほしいってお願いしたのは僕だから」

「じゃあお言葉に甘えて」

メニューには複数のパンケーキとデザートが並び、メインではないパスタの写真までが美味しそうに載っている。
私はベリーパンケーキを頼み、横山さんはサーモンとほうれん草のパスタを頼んだ。

店内を見渡すと女性客やカップルが多い。私と横山さんも今はカップルに見えているのだろうか。

パンケーキとパスタがテーブルに運ばれてくると横山さんは「マナーが悪くてごめんね」と言ってスマートフォンで写真を撮り始めた。

「パンケーキも撮りますか?」

「うん」

私は横山さんに向けてパンケーキのお皿を動かした。
一通り撮り終わると「ごめんね、行儀悪くて。参考資料に保存しないといけなくて」と申し訳なさそうな顔をする。

「いえ、気にしないでください」

彼は今日仕事で来たのだから私は邪魔をしてはいけない。

「北川さんが一緒に来てくれて助かるよ。僕一人だと写真も撮りづらいし」