「いつも一生懸命だもんね」
その言葉に一転して胸が熱くなる。横山さんにそう言われると社内を駆け回るのも苦じゃないと思える。
どうやら横山さんを好きになってから単純な思考回路になってしまったらしい。
「そうだ、北川さんこれ食べてみて」
横山さんは調理台の上に置かれたお皿を私に手渡す。
「今度軽食として販売するものなんだけど、今試作を作ったんだ」
お皿にはフランスパンのようなパンに具を挟んだサンドイッチが載っている。
「カルボナーラサンドなんだけど」
「カルボナーラ……ですか?」
「ベーコンと半熟卵とカルボナーラフィリングを挟んでみたんだけど、どうかな?」
「いただきます」
私はサンドイッチを一口かじった。横山さんと主任の視線を感じて緊張する。
「美味しいですけど……何かが足りない気がします」
「何かな?」
「えっと……卵がとろっとしてるのはカルボナーラっぽいですけど、これだとパンから垂れてきちゃって食べにくいです……」
「あとは?」
「別にもう少し食感がほしいです。固形のものというか……噛み応えのある具材があるとパンに挟んで食べたときにちょうどいいかもしれないです……」
「そうか……」
横山さんも主任も黙って考え込んでしまった。
「あ、あの……私の意見ですから、あまり気になさらないでください!」
「いや、北川さんの感想はそのままお客様の感想だから」
「もう少し考える」
主任はレシピ表と具材を見比べて卵を手に取った。
「北川さんありがとう」
「いえ……」
こんな私の意見でも役に立ったなら嬉しいな。