「はは、お疲れ様」
横山さんは私を見て笑う。恥ずかしくて堪らない。
「ここいいかな?」
私の向かいの席を指差した。
「はい、どうぞ……」
横山さんはコンビニのお弁当をテーブルに置くと向かいの席に座った。思いがけない横山さんとの昼食に、嬉しいやら緊張するやらで前を向けない。
「お弁当美味しそうだね。自分で作ったの?」
「はい。昨日の余り物ですけど」
お弁当は節約のためほぼ毎日自分で作っている。大体は昨夜の残りを入れているだけだけれど。
「北川さんって一人暮らし?」
「実家です」
「偉いね。ちゃんと自分で作るなんて」
「いえ、本当に残り物を詰めるだけですから」
横山さんに褒められて照れてしまう。
遅い昼食も悪くないな。
「あ、煮物!?」
横山さんが私のお弁当を見て急に大きな声を出した。
「これ肉じゃが?」
「は、はい……そうです……」
「僕ジャガイモの煮たやつ大好きなんだよね」
私のお弁当には昨日作った肉じゃがが入っている。横山さんの目はジャガイモに釘付けになっていた。
「筑前煮とかも大好きで」
「よければどうぞ……」
私はお弁当箱をゆっくり横山さんの前に押し出した。
「ほんとに? ありがとう! いただきます」
横山さんは私のジャガイモを一口食べた。
「うまい! 味付けもちょうどいいし」
私は顔が赤くなるのを感じた。
「よかったです……煮崩れして見た目が悪いですけど……」
「いや、これがいいんだよ。懐かしい味する」
「私も母によく作ってもらって、好きなんです。簡単ですし」
これは夢かな? 今横山さんと二人で会話をしている。しかも私のお弁当を食べてもらえて。