落ちる恋あれば拾う恋だってある



あれから1年以上たつ。私のイメチェンなんて小さな話題はすぐに消えて、以前と何も変わらず雑用を押し付けられている。
変わったことは入社3年で少しだけ強く意見を言えるようになった。今は現状に満足している。
欲を言えば、そろそろ恋がしたいことくらい。



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薄手のコートがちょうどいい季節になった。春の風が心地よくて、こんな日なら外に出るお使いもいいかなと思ってしまう。

郵便局に行った帰りに会社が馴染みの老舗お茶屋に寄った。秘書室からお決まりの「役員の飲む茶葉を買って」と言われていた。
役員だけではなく秘書も飲むから早く減るのだ。他の部署はインスタントコーヒーか、粉末の緑茶を溶かして飲んでいる。美味しいお茶が飲めて羨ましい。

馴染みの店員さんからいつもの茶葉を買ってお茶屋を出た。
今日は仕事が押していて、ランチタイムも終わるというのに私は今から昼食だ。

オフィス街の古明橋はこの時間特に人通りが多く、どこの飲食店も混んでいて列ができているお店もあった。

「夏帆ちゃーん!」

突然名前を呼ばれて辺りを見回した。

「こっちこっち」

車道を見ると停められた車の横に椎名さんが立って手を振っていた。

「えっ、何で?」

「おいで」

左右に振っていた手を今度は前後に動かし、私に来いと言っている。躊躇われたけれど、私は椎名さんに近づいた。

「どうしてここにいるんですか?」

「古明橋エリアの担当だって言ったでしょ」

椎名さんは車を軽く指差した。見覚えのある『アサカグリーン』のロゴが入ったワゴン車の後ろにはたくさんの植物やプランターが載っている。

「仕事で来てるの」

「そうですか……」