「はい。社長、副社長以下役員の皆様はそのようにと」
宮野さんは目を逸らすことなく私を見返す。
「この場に役員が誰もいないことは申し訳ございません。まずは私が電話で確認しました。宇佐見さんの処分を会社に任せていただければその他のことは後日北川さんと直接お話したいとのことです」
私は椎名さんを見た。
「夏帆ちゃんの自由だよ」
そう椎名さんは優しく言う。
椎名さんから目を離し、私たちに視線を向ける他の社員を、そして宇佐見さんを見た。
こんな風に好奇の眼差しを向けられたり、悪意をぶつけられることはもう嫌だ。穏やかに、落ち着いた生活をしたい。
「先に一つお願いがあります」
「何でしょう」
「椎名さんとアサカグリーンさんには一切の迷惑をかけないと約束してください」
「夏帆ちゃん?」
椎名さんは身を乗り出し私の顔を見た。
プライベートで早峰にいたことがアサカグリーンに知られたら、椎名さんの立場が悪くなるかもしれない。この人に迷惑をかけちゃいけない。それだけは絶対に。
「椎名さんがこの場にいたということを出来る限り知られたくはありません」
「分かりました。善処します」
宮野さんはそう言うと立ち上がった。
「北川さん」
「はい」
「申し訳ありません」
宮野さんは私に深く頭を下げた。
「み、宮野さん!?」
数秒後に頭を上げた宮野さんは颯爽と人混みの中に戻ると警察官と話し始めた。しばらくすると警察官は自動ドアから外に出ていった。
「本当にお引き取りいただいちゃった……」
「夏帆ちゃんよかったの? この際だから宇佐見さんを訴えちゃえばよかったのに」
丹羽さんは心配そうに私を見つめた。



