だんだんと私の体は震えてきた。この異常事態についに頭が追いついた。
「もうやめて……」
酷いことしないで。私に構わないで。
ガタガタと震える体が腕に包まれた。
「大丈夫」
耳元で囁かれる言葉に、私を包む腕の主にしがみついた。
「もう大丈夫だよ」
「っ……うぅっ……」
涙が溢れた。
「恐かった……」
「もう大丈夫だから」
片腕の力が強くなり、もう片方の手は私の頭を優しく撫でた。その慣れた仕草は私を落ち着かせるのに十分な効果があった。
泣きわめく声とそれを取り囲む野次馬の社員たち。誰かの通報で駆け付けた警察官二人とそれを必死で追い返そうとする秘書室の人たち。
私はロビーのソファーに座ってそれらをぼーっと眺めていた。
定時を過ぎたこともあり、いつの間にかエントランスには大勢の社員が溢れている。
「夏帆ちゃん落ち着いた?」
「はい……」
「ごめんね、大変なことになって」
「椎名さんが悪いわけじゃありません。私を守ってくれました……」
今も椎名さんは私の手を握っていてくれる。
椎名さんが悪いわけではない。ただ巻き込まれただけだ。
もしも椎名さんがこの場に居たことで、アサカグリーンと椎名さんに迷惑がかかってしまったら私はどうやって詫びたらいいのだろう。
エントランスの床にぺたりと座り込んで泣く宇佐見さんを見て、もう怒りすら湧かない。こんなことをしてしまうなんて可哀想な人だと思う。
「椎名さん、腕が!」
ふと見た椎名さんの腕は紫色に変色していた。私を宇佐見さんから庇った時に強くぶつかったのだろう。
「ああ、大丈夫。骨折はしてなさそうだし。人の手とぶつかっただけだしね」
「目は?」



