落ちる恋あれば拾う恋だってある

◇◇◇◇◇



『もうすぐ早峰に着くよ』

椎名さんからLINEがきた。

『よければ会社の前のロータリーにいてください』

『分かった。待ってるね』

ロータリーなら他にも車が止まっているから目立たない。
あと少しで定時だ。仕事は全部片付けたし、他の部署から呼び出されても絶対に行かない。

「夏帆ちゃん何か良いことあった?」

「え?」

丹羽さんがパソコン越しにニコニコと私に聞いてきた。

「嬉しそうだから」

「はい……実はこの後デートというか……デートの手前というか……」

「そっか。それは良かったね。椎名さんによろしくねー」

「はい。……え? 何で椎名さんだって分かるんですか?」

「何となくそうなのかなって」

「すごいですね丹羽さんは……エスパーみたい」

「なにそれー。違うよ、勘が鋭いの」

「全てお見通しって感じです」

「そんなすごくないって。あ、でも椎名さんなら大丈夫な気がするよ」

「何がですか?」

「夏帆ちゃんが幸せになれる」

「……そうでしょうか?」

「うん。私は椎名さんをよく知らないけど、なんか分かるんだ。少なくとも元カレよりはましだからね」

丹羽さんは笑顔で同期の修一さんを否定する。私としては苦笑いだけれど。

「楽しんできてね」

「はい」





自動ドアを出ると少し離れたところに椎名さんの車が止まっていた。早足で車に近づくと、椎名さんが車から降りてきた。

「お疲れ様」

「わざわざすみません」

「いいよ。大丈夫」

早峰の中では見慣れているはずなのに、ロゴ入りTシャツを着ていない私服の椎名さんはいつもと違って見えた。私服は何度か見ているはずなのに。

言わなければ。こうして私と向き合って、私を待っていてくれる椎名さんに応えなければ。