夏帆が泣きながら電話をしてきた日、俺は内田と飲んでいた。途中で夏帆からの電話を受けると内田に金を渡して店を急いで出た。そのことをまだ引きずっている。
「いいよ。怒ってないし、おつりはありがたくもらったから」
内田は俺の顔を見るとにやりと笑った。
「おい! やっぱ飲み始めたばっかで5千円は多かったか……」
「それに、椎名が女の都合に合わせて動くなんて珍しかったしね」
「なになに? 椎名くんが女の子に弄ばれてる話?」
「違いますって! ほら、うっちー早く打ち合せするよ」
「まだ別件の話があるから、数分だけ待ってて」
「早く頼むよー」
内田は再び店の奥に行ってしまった。
手持ち無沙汰になり店長が花束を作っているのを見ていた。
「それ予約のですか?」
「そう。あと30分くらいで取りに来られるの」
「へー」
店長の作る花束はヒマワリを中心にオレンジや白で纏められ、透けるほど薄い葉を飾りに添えた上品な花束だった。
「椎名くんは花をプレゼントしたことある?」
「いやー、花はないっすね。母の日に親にあげたくらいしか」
「たまには女の子にプレゼントしてみな。意外と喜ぶかもよ?」
「そうすかね?」
女に何かをあげたのなんて数えるほど。花をあげるなんて照れくさいのだが……。
「うっちー待ってる間に作ってもらおうかな……」
「彼女にあげるの?」
ニヤニヤと笑う店長に恥ずかしさが込み上げる。
「いや、そうなったらいいなっていうか……」
「よし! じゃあ椎名くんにも本気の作品を作ってあげる!」
店長は予約の花束を作り終えると店内の花をいくつか取り、俺の花束を作り始めた。
今日は夏帆との約束の金曜日だ。それを持って迎えに行こうと思う。



