場所によって被害の大小があり、総務部の鉢が一番酷く、役員フロアの鉢は倒されたが土がこぼれただけで、葉や枝は無事だった。それでも秘書室の宮野さんは激怒していた。植物が好きな宮野さんは一緒に鉢を起こすと愛おしそうに葉を撫でた。
「総務部長はもちろん上に報告するでしょうが、私からも被害を報告させていただきます。こんなことをするなんて許せません」
怒った宮野さんはいつもの冷たい印象に輪を掛けて恐い。今後怒らせないように気を付けようと思ってしまった。
「誰がやったか調べる。分かるまではアサカグリーンには何も言うな」
「はい……」
部長もこの件には参っているようだ。上に報告のためか出ていくと午前中いっぱいフロアに戻ってこなかった。
「酷いね……こんなことするなんて」
「本当に……」
「社内の全部の鉢にこんなことするなんて異常じゃない? 精神病んでるのかな?」
丹羽さんの言葉に何も返すことができなかった。確かに、植物に八つ当たりするなんて普通じゃない。精神的に病んでしまっている社員がいるということだ。
私と丹羽さんだけが落ち込んでいるわけではなかった。割れて散らかされた観葉鉢は多くの社員が見ている。社内全体が浮き足立っているように感じた。
プルルルルル
部長がフロアを出てから2時間ほどたったころ丹羽さんのデスクの内線が鳴った。
「はい、丹羽です。……はい……はい、分かりました」
受話器を置くと丹羽さんは私の方を見た。
「夏帆ちゃん、部長が第一会議室に来てって」
「え? はい……さっきの件ででしょうか?」
「さぁ……」
総務部のフロアの中では話せないことなのだろうか。
立ち上がり丹羽さんとエレベーターに乗った。



