一気に話をしても、椎名さんは口を挟むことなくじっと聞いていてくれた。
「それがもう、全部どうでもよくなって……」
魔法かというくらい椎名さんに会ったら気持ちが楽になる。この人がどんなに大きな存在か思い知ってしまった。
「もう……自分に笑えてきちゃって……仕事も何もかもどうにでもなれって……」
「どうでもいいなんて言うなよ」
「え?」
「夏帆ちゃんがずっと耐えて頑張ってきたことをバカにされたままでいいの?」
「…………」
「会社辞めたい?」
「迷っています……」
会社で修一さんに会うのも怖い。別れて噂になるのも嫌だ。宇佐見さんにどんな嫌みを言われるか不安だ。
「早峰に就職が決まった時、すごく嬉しそうな顔で君は笑ってた」
椎名さんの瞳が私の瞳を捉えた。
「俺の背中を押してくれた夏帆ちゃんには投げやりになってほしくない。慎重に考えて」
「でも……」
頑張れるだろうか……。もう精神的に限界が近いのに。
「俺さ、前の仕事を考えなしに辞めちゃって、やりたいこともなくて自分が情けなくてさ」
そういえば3年前の椎名さんはどこか不安そうな目をしていた。それが私と同じだと思ったことを思い出した。
今思えばそれは意外だった。椎名さんは何でも自信満々にこなしているのかと思っていた。
「夏帆ちゃんの言葉に救われた。あの時君がいたから今の俺があるんだよ。だからよく考えて。人間関係で悩むのは仕方がないよ。だったら尚更、人生の選択を間違わないように」
「はい……」
「なんて、横山さんと別れてくれて嬉しいと思う俺が言うのもおかしいけど」
椎名さんは苦笑いだ。



