「つまり宇佐見とケンカしたってこと?」
非常階段でパイプ椅子に座った総務部長は呆れた顔をした。
「ケンカではないですけど……私的な内容も含めて言い合いをしました……宇佐見さんが勝手に動かしたのが悪いんです!」
「まあまあ少し落ち着け。総務部の通路には何年も前から観葉植物をリースしてる。ここは日当たり悪いから少しでもグリーンが欲しくて俺が置かせたんだよ」
部長はイライラと呟く。
「営業推進部には要らねぇ。あいつらは会社にいる時間の方が少ないんだから余計な経費は使わせない。総務部はいい。俺が置きたいからだ。宇佐見には俺が許可しないって言っとけ」
「はい……」
四十代半ばのこの上司はぶっきらぼうに言い切った。宇佐見さんの思い通りにはいかなくて少しだけ嬉しいと思ってしまう。
「北川、その宇佐見が流しているかもしれない噂は俺の耳にも入ってるぞ」
私は思わず身構えた。
契約更新が近い。今問題を起こしたくないのに部長からその話を振られて焦る。
「プライベートな話を会社に持ち込むな」
「はい……申し訳ありません」
「宇佐見のことは営業の部長にも言っておく。問題行動が目立つって」
「ありがとうございます」
思わず感謝の言葉が出てしまった。宇佐見さんだって上司に目をつけられるのは避けたいはずだから。
「それと、北川は横山と真剣に付き合ってるのか?」
「え?」
「プライベートな話を持ち込むなとは言ったけど、相手も社内のやつならある程度俺は知っておかなきゃいけないから」
「すみません。ご報告が遅くなりましたが、横山さんと付き合っています」



