落ちる恋あれば拾う恋だってある


「そうですか……分かりました」

そう言うと宇佐見さんは今度は残念そうな顔をした。
私と椎名さんは宇佐見さんをフロアに残し扉から通路へと出た。

「すみません。わざわざ来ていただいて」

「構わないよ。仕事だし」

「余計な仕事を増やしてしまいました」

「夏帆ちゃんのせいじゃないから」

いや、こうなったのはきっと私への当て付けだ。

「まったく、勝手に動かして葉焼けさせるとか、あの女めちゃくちゃだな」

「すみません……」

「だから、夏帆ちゃんが謝らなくていいの。でも残念だな。あのマッサンゲアナは総務部の通路に置きたかったのに。今手元には違う種類しかない」

「こだわりがあるんですか?」

「マッサンゲアナは幸福の木とも呼ばれてるんだ。別に、育てたからって幸福になる効果はないけど」

「へぇー素敵ですね」

幸福の木を毎日見てから仕事をするなんていいかも、なんて思った。
私の言葉に椎名さんは笑った。その笑顔にドキッとする。

「夏帆ちゃんどうする? これから営業推進部にも鉢置く?」

「えっと……」

営業推進部というよりも宇佐見さんが個人的にデスクの横に置きたいだけだろう。総務部にどうしても観葉鉢が必要なわけではないけれど、長年そこに置いてあるし個人的な事情で移動もさせられない。

「部長に相談します。あの鉢は一旦総務部の通路に戻します。あのままじゃ可哀想ですから」

「じゃあ俺運ぶよ」

「でも動かしたのはこちらですので……」

「いいよ。重いから大変だよ。それにもし陶器を割ったら困るのは夏帆ちゃんでしょ?」

確かにそうだ。弁償しなければいけなくなる。

「どうせあの人夏帆ちゃん一人に運ばせそうだし」

「そう……ですね……」