落ちる恋あれば拾う恋だってある


強気に言いきった。私よりも年上の先輩に「大人になれ」と遠回しに言ってしまった。宇佐見さんは目を真ん丸に見開き、顔がどんどん赤くなる。

「誰に向かってそんな口をきいてるの?」

私も怒っているが、宇佐見さんを完全に怒らせたようだ。
険悪な雰囲気にフロアにいる少ない社員たちは固唾を呑んで見守っている。

「…………」

「…………」

鋭い視線に目を逸らしそうになる。
私は窓に向かって立っているため、夕陽が眩しくて目を瞑ってしまいそうだ。

先に折れたのは宇佐見さんだった。

「わざわざ取り返しに来ていただいて、北川さんも忙しいのに申し訳なかったわ」

「いえ……」

分かってもらえたようでほっとする。

「じゃあどうぞ、戻していただいて結構です」

「え?」

「総務部に持って帰ってください」

「私がですか?」

「そのために来たんでしょ」

宇佐見さんは意地の悪い笑みを浮かべた。

自分で持ってきたのに私に戻せと?

陶器だけでも重いのに、土がいっぱいに入っているし植物の高さも胸まであるのだ。そもそも宇佐見さん一人じゃ運べなかったはず。誰かに手伝ってもらったに違いない。

「それとも、これから来る椎名さんに運んでいただきましょうか」

「え?」

「北川さんは修一だけじゃなくて椎名さんとも仲がよろしいですもんね。北川さんが頼めば椎名さんも快く運んでくれるわ」

宇佐見さんはニヤニヤと私を見つめる。この人は私と椎名さんが何かあると感づいている。

「次から次に男性に言い寄って。北川さんはさぞ毎日お忙しいでしょうね」

今度は私の顔が赤くなる番だ。

「私は椎名さんに言い寄ってなんていません!」

宇佐見さんは勝ち誇った顔をした。
この人はどこまで私に嫌がらせをする気なのだろう。