落ちる恋あれば拾う恋だってある


「どうしましょう……リースしているものなのに……」

「社内を探してみるしかないね」

けれど探しても付近のフロアには見つからない。丹羽さんと二人で困り果てた。あんなものが移動する理由がないのに。
結局見つからなくて取り敢えず探すのを断念した。もし不自然な場所にあれば誰かが内線してくるだろうと思った。





プルルルルルルル

総務部の電話が鳴った。電話を受けた同僚が私の方へ顔を向けた。

「北川さん、アサカグリーンの椎名さんから1番にお電話です」

「え?」

まだ鉢が見つかっていないこのタイミングで椎名さんから電話なんていろんな意味で覚悟ができていない。

「ど、どうしましょう……」

「夏帆ちゃん取り敢えず出てみな」

「はい……」

私は自分のデスクの受話器を取ると、1番を押した。

「はい、北川です……」

「椎名です」

「お世話になっております」

「こちらこそ」

先日のやり取りを一切感じさせない軽い口調だった。それはいつもの椎名さんの声だ。

「夏帆ちゃんさ、うちの観葉鉢が枯れたって報告は上がってる?」

「いいえ……」

他の部署からはそんな連絡はきていない。秘書室の宮野さんは頻繁に植物の様子を見ているが、最近は苦情を言ってこない。

「そうか……」

「何かありましたか?」

「あのさ、俺の番号に営業推進部の宇佐見さんから連絡がきたんだけど」

「え? 営業推進部?」

「今営業推進部に置いてある鉢が枯れたらしいんだよね。でも営業推進部には鉢置いてないよね?」

「そのはずですけど……」

「確認してくれる? 夏帆ちゃんからじゃなくて宇佐見さんから直接くるのも気になるし、社内で鉢を移動させたとか言ってるんだ」