落ちる恋あれば拾う恋だってある


「えっと……」

「早峰フーズの宇佐見です。先日生花のカタログの件でお話しさせていただきました」

「ああ……」

思い出した。名刺の裏にプライベートの連絡先を書いて寄こした女だ。そして横山の元カノでもある。
その女がどうして俺の番号を知っているのだろう。宇佐見に名刺を渡した覚えはないのに。

「実は、御社からお借りしている植物が枯れてきちゃってるみたいで」

「そうですか。それは申し訳ございません」

俺の口から出た言葉には少しも申し訳なさを感じない。驚くほど感情がこもっていなかった。

「一度様子を見に来ていただけませんか?」

この女に不信感を抱いた。俺の番号を知っていることもそうだが、観葉鉢が枯れたなどの連絡は全て夏帆からアサカグリーンの本社を通してくるはずだ。総務部の他の社員からならまだ分かるが、宇佐見から直接連絡がくるなんて引っ掛かる。

「かしこまりました。場所はどこに置いてある鉢になりますか?」

「営業推進部です」

「は?」

早峰は広くて置かれている鉢の場所も複雑だけれど、俺はどこに何を置いているかを把握している。営業推進部には何も置いていないはず。そんな話になりかけて夏帆が怒っていたから覚えている。

「実は社内で植物を移動しまして、今営業推進部にも置いてるんです」

「そうですか……」

勝手なことをしてくれたな。早峰に行けば夏帆から説明でもあるのだろうか。

「今日中にお願いできそうですか?」

「はい、夕方にはお伺い致します」

今日は古明橋に行く予定はなかった。もう1件定期顧客の所にメンテナンスに行ったら農場に帰るつもりだったが、枯れたとなればこちらの過失だ。すぐに行かなければならない。