長椅子に座り込んだ。
誰もいなくなったホームで残された私の紙袋と並んで夜空を見上げた。
◇◇◇◇◇
普段の夏帆よりも、もちろん過去の夏帆からも想像できないほど、結婚式に出席している夏帆は綺麗だった。主役である新婦にも負けないくらいに。
抱き締めて俺だけのものにして手放したくないと思ってしまう。そうして行動した結果にいつも後悔するのだ。
「もし俺が先に……」
もっと早く、強引にでも、飾らずに気持ちを正直に伝えていたら、俺のことを好きになってくれた?
何度も心の中で問いかけた質問を、もうだめだと泣く夏帆には最後まで言うことができなかった。
今更その答えを知ったって意味がない。手を伸ばしても君はいつも俺に捕まらない。
それでも願わずにはいられない。
俺を見て、俺の隣で叱って、励まして、一緒に笑ってほしいと。あの日俺の背中を押してくれたように。
俺はこんなにも北川夏帆を想っているのだから。
「うっちー久しぶりー」
アサカグリーンの本社に顔を出した俺は営業部に所属する同い年の内田に声をかけた。
「うっちーって呼ぶな」
内田は眉間にシワを寄せた迷惑そうな顔で俺に自分の隣のイスを寄越した。遠慮なくそのイスに座ると、内田のパソコンの画面を覗き見た。
画面には来年オープン予定の大型リゾート公園の見取り図が出ている。内田は公園の一部装飾を任されることになった。完成まで数年にも及ぶ大きなプロジェクトだ。
入社7年目の内田はストイックな仕事ぶりで社内でも今後を期待されている。
黒縁のメガネをかけた見た目からして真面目な内田と俺ではタイプが違うが、波長が合うのか何かと話をすることが多い。



