草野を待っている間に、えつこは草野の母に浴衣を着せてもらった。 紺色の生地に金魚の柄で、 帯は真っ赤なものを締めてもらった。 「浴衣ってね、すぅごく涼しいの」 「…そうですね」 「えつこちゃん細いから、よく似合う」 どういうわけか涙が出そうになる。 こうやって、好きな人と旅行して、 家族に気に入られて、浴衣を着て。 そんなことがどうしようもなく嬉しい。 「あら…」 草野の母はぽろぽろと泣くえつこに、 優しくほほえんだ。