愛したのが君で良かった




『…おい!』



教室を出て、少し歩いたところで、悠哉が追いかけてきた。



そして追いついた私の腕を強く引き、その反動で私は悠哉のいる方に振り返る形になってしまった。




『………なに?』


私は恐る恐る、悠哉に問いかける。


答えなんて分かってる、

数秒後に言われる言葉も想像できる。




でも、


でもね?


悠哉だけには止めを刺してほしくないいんだよ…






祈るような気持ちだった。


そんな祈りは聞いてももらえないのに。





『あれ、俺に作ったの?』



悠哉はまたその質問をしてくる。




あーぁ…そうですよ!


私があんたに食べてほしくて作ったんですよ!!



でも、心の声は、口から出ることはなく。


私は、ただ、その場で黙り、そして俯いた。





『のり、俺の質問に答えて』




なんで、そんな質問なんかすんの?


そんな質問して、私が“そうだよ”なんて答えたら、どうすんの?



困るのは、そっちじゃんか。


困った顔をするのは、悠哉の方じゃん。






『のり』





悠哉が私の名を呼んだとき。



もうね?


“いっそ困ってくれ”、そう思ったの。



困って、困った顔で私を見て?


困って、困った声で私に言葉を紡いで?




そしたら、私は悠哉へのこの恋を終わらせられる、そんな気がしたの。













『……そうだよ』



私が答えると、悠哉は私の腕を掴む手の力を強めた。




『…そっか』





ほら、困った…


顔なんて見なくても、その声で分かるよ。




ばーか。

ばーか。


悠哉のばーか。



私のバカ…





もう涙腺が緩んで、涙というものが溢れ出しそうな、そんな気がする。



そう思った時、私の目から零れる涙の粒…





あーぁ…



もう、終わっちゃった。











私の恋はやっぱり成就できずに、散っていくんだね…