愛したのが君で良かった





悠哉はそっと膝を曲げ、床に散乱したお弁当箱を拾い始めた。





『………アスパラ…』


悠哉は一つ一つのおかずを拾い、その中にアスパラの肉巻きが入ってることに気付いた。


私は悠哉の言葉を聞いて、自分も床に膝まづき、そして悠哉からお弁当箱を奪い取った。




『のり、それって、俺に作ってきた弁当なの?』


悠哉のまっすぐな声に、私は泣きそうになる。



…そうだよ?

悠哉に食べてもらいたくて、悠哉に“うまい”、そう言ってほしくて、昨日の夜から下ごしらえなんかして。


頑張ったんだよ?




けど。



『のり?』


私がそんなことを言ったら、きっと悠哉は困ってしまうから。





『…違うよ!
 私が食べる用に作ったの!』


私は何もなかったかのように笑って、お弁当箱の蓋をしめながら、そう言った。





『ほらなー、鈴木なら絶対に二個いけるって』


クラスの男の子はそう言って、笑った。




そんな訳、ないじゃん…


いくら私がデブとは言えども、二個なんて食べないよ…



でも、心の言葉を口にすることはできなくて。


その場にいるのが、ただ辛くて、ただ悲しくて、ここにいたくなくて。






『麻奈美、私トイレ行ってくる!』



私は、逃げ出した。