愛したのが君で良かった



その日の夜。

私はお弁当の下ごしらえをして、次の日の朝は誰よりも早く起きてお弁当を作った。


悠哉が好きって言ってたアスパラの肉巻きもいれたし、よし、準備OKだ!


私は急いでカバンに入れて、学校に向かった。



その日の午前の授業は全くと言っていいほど身が入らなくて。


あっという間にお昼になってしまった。




『希子ーご飯食べよ!』


いつものように麻奈美が私の席の隣に腰掛け、お弁当を広げる。



『あ……うん…』


私はカバンに入ってる、自分の分のお弁当を取り出す。


もう一つのお弁当は…





『どうした?』


なかなかお弁当を広げない私を麻奈美は見つめ、そう問いかけてくる。



『…え……ううん』



…言えない。


悠哉にも“お弁当を用意したよ”なんて言えない。


麻奈美にも。





『……もしかして、アイツの分?』


麻奈美は私のカバンの中身を無理矢理、確認する。




『へー、作ってきたんだ♪』


麻奈美はカバンの中にある、もう一つのお弁当を見つけ、ニヤケた顔で私を見つめる。





『……まぁ…』




『…って、渡さないの?』



麻奈美に突っ込まれるも、渡せないでしょ、そう心の中で呟く。



“弁当作って”、そう言われたわけでもないのに、勝手に作ってきて、それで食べてなんて言えやしない…





『…うん、やっぱいい……』



渡す勇気もないのに、なんで作ったりなんかしたんだろう…。



作らなければ良かったな…


そしたら、今、こんな風に悩まずに済んだのに…





『悠哉ー』


悩む私の横から、麻奈美は奴の名を呼んだ。




…へ!?


麻奈美を見つめると、麻奈美は悠哉に手を振ってる。




え……



そんで気付いたよ、あの人。



そんで、こっちに来るんだけど…



ちょ…ちょっと待ってよ?


どう言えばいいの?


てか、渡すの、渡さないの?



ど…どっち…!?