崖の下には、深い海が広がっている。

ザパァッ、ザパァッ、と飲み込むように波打っていた。



僕は一度レウを抱きしめてから、海にレウの遺体を放つ。



トプン、と小さく飛沫をあげ、真っ黒な海に飲み込まれていくレウ。

どんどん沈んでいき、見えなくなった。



「……ごめん」



謝罪の言葉が口をついて出た。

誰に対してなのかは、自分でも分からない。

レウの母親?レウの父親?

それとも、レウに?

もしくは……香宮 ロア?





ま、もう全員いないけど。





さて、これで僕のやりたい事は、全部終わってしまった。

このまま保険医として生きても、つまらないだろう。


もう、いいや。



僕はトレンチコートのポケットからスマホを出す。



通話ボタンを押し、茂呂 リイチの人生を終える番号を押した。














1、1、0と。