私は口を開いて、必死に話す。


「―――ね、ぇ……リ、イチ先、生……」

「あ?」

「だ、いす……き、で、すよ……―――」


駄目だ。意識が遠のいていく。

これは本当の気持ちだった。

『神谷 レウの両親を殺した無差別殺人事件の犯人である茂呂 リイチ』は大嫌いだし、死んだって許す気は無い。

でも、『神谷 レウを嘘でも好きと言ってくれた、保険医の茂呂 リイチ先生』は、まだ大好きなままなんだ。

ね、先生……

もどって、くれない、の、か、な……












もう身体に全く力が入らない。

指先一つ、動かせない。



丁度六月三十日、私が生まれた日。

私の誕生日、神谷 レウは死んだ。