放課後。




蓮と一緒に病院に来た。



来る途中まで楽しく喋っていたのに、

病院に近づくにつれてだんだん言葉が出なくなった。



そんな私に気づいて蓮も何も言わなかった。



ただ二人で並んで病室に行った。




「由佳さん来たよー。」




私の声に振り返った由佳さんは優しい笑顔で微笑んでくれた。



でもその笑顔はひどく疲れていくように見えた。




「ふふっ。来てくれたの?ちづるちゃん、蓮君。ありがとうね。」




私の後ろにいた蓮は、私の耳元で小さい声で




「名前、覚えてくれてた。」




って嬉しそうに笑った。



名前を覚えていた。



ただそれだけなのに、今はどんなちっぽけなことでも、私も嬉しかった。



私たちの小さな声でのやりとりに、きょとん顔の由佳さんだったけど、

穏やかな表情をして




「なんにも無いけど、ゆっくりしていってね。」




って言って静かに病室を出ていった。