一分も経たないうちに、また足音が響いた。今度は遠ざかっていく。


扉が閉まる音で、目を覚ました。



近くにはもう誰もいなかった。




「……誰か、いた……よね?」




でも一体誰が?


わからない。わからないけど、いい人には間違いない。




あんなに優しく、温もりのある声や手をしている人は、きっといい人だ。





「誰だったんだろう……」



結局、その“誰か”は全くわからなかった。


私はあの優しさと温もりだけは永遠に憶えていたくて、心の中にしっかりと焼き付けた。







「赤軍優勝!!」



外から、結果発表のアナウンスが放送された。かすかに聞こえた朗報に、思わず「やった」とはしゃぐ。



赤軍のであろう歓声が、保健室にまで届いた。




ガヤガヤした騒ぎに紛れて、保健室に差し込む太陽の光が、強く煌めいた。


祝福してくれているようだ。


その輝きをすくい取るように、両手を合わせて握った。手をほどいて、手のひらを覗き見る。そこに輝きはなかった。