「俺も、約束した日のことをよく夢で見るよ」
「凪雲先輩もですか?」
「あぁ。桜のつぼみが、目にちらつくんだ」
凪雲先輩は大きな木を眺めてから、瞼を閉じた。
桜のつぼみってことは、凪雲先輩も約束を交わしたのは春なの?
でもつぼみってことは、春になってばかりの三月頃?
……あ。
そういえば、私が先輩にここで人を待ち始めたのはいつか聞いた時、三月頃だって答えていた。
約束を交わした月と、同じ。
考えてみれば私も、約束を交わしたのは確か……私が六歳なったばかりの頃だった。
私は四月生まれ。両親が私が生まれる前この公園を訪れた際、満開に咲く桜の木に感動して「桜」と名付けることにしたらしい。
そして六歳になった私は、四月にこの公園に来た。
私も、約束を交わした月と同じ月に、ここで初恋の男の子を待つことを決めたんだ。
「私は、ゆびきりげんまんした光景を、何度も何度も繰り返して見るんです。大好きだった男の子の顔や名前は、夢には出てこないんですけど」
私はもどかしげに、夢の内容を語った。
知りたいのに、思い出したいのに、どうしてか夢には出てこない。



