「桜ちゃん、こんにちは」
緊張より心配の念が膨らんできた頃、クリアに響いたのは大好きな人の挨拶。
出入口側から近づいてくる足音に、笑みを漏らす。
「こんにちは、凪雲先輩!」
顔だけ振り向かせ、挨拶を返した。
再び緊張が大暴れし出して、どうにかなってしまいそうだ。
「遅かったですね」
「病院に寄ってたんだ」
え、と呟きが沈んでいく。
足音のリズムが、私のやや後ろで停止した。
横目に、卒業証書を握る右手が見えた。
「海さんに何かあったんですか?」
「海が……目を覚ましたんだ」
「え……!」
海さんが、ついに!?
ずっとずっと待ち焦がれてきた瞬間が、ようやく現実になったんだ。
凪雲先輩が待ち続けた時間が、ようやく報われる。
自分のことのように安堵した。
海さんが目覚めたら、もっと薄汚い感情が芽生える気がしていたけど、全然そんなことなかった。そのことに、また、安堵した。
……あれ?でも……。



