君待ち人





思わず、口元がニヤける。



「嫌い」を「好き」に変えることは、想像以上に難しい。一度貼られたレッテルは、外すのに勇気が要る。



凪雲先輩は本当に一歩ずつ前進しているんだ。


春を好きになってくれてよかった。



桜の木も嬉しそうにゆらゆら大きく揺れていた。







いつの間にか始まっていた卒業までのカウントダウンが、「0」になった。



いよいよ今日は卒業式。


ついに、凪雲先輩ら三年生が、花丘高校を卒業する。




すすり泣く声の絶えない卒業式中、私は泣けなかった。まだ泣きたくなかった。



答辞を話す生徒会長、卒業証書を受け取る凪雲先輩、涙を堪える緋衣ちゃんと白河くん。人それぞれの卒業を迎え、式は滞りなく行われた。




卒業式が幕を下ろした。

私達在校生は片付けを終えてから、解散となる。




自分の片付け担当を急いで終わらせて、若葉公園へ向かう。


早咲きの桜が満開に咲き誇っている公園に到着したが、まだ凪雲先輩は来ていなかった。



もう来ていると推測していたけど、三年生同士で話したり写真撮影したりしているのだろう。


今日は卒業式だったから、三年生の多くが名残惜しさに長く学校に残るようだし。




私はベンチには座らず、大きな桜の木の前で立ち止まった。



「綺麗……」



すっかり薄紅色一色になった桜の木に、圧倒される。