てっきりずっと、凪雲先輩は春が嫌いだと勘違いしていた。
だって、凪雲先輩にとっての春は、大切な人が……海さんが眠りにつき、気持ちを伝えられなかった季節だから。
「凪雲先輩は、春が嫌いだと思ってましたけど、違ったんですね」
「……好きに、なったんだ」
凪雲先輩の大きな手が、桜の木の表面に触れた。
「春を好きになれたのも、桜ちゃんのおかげなんだよ」
「私の、おかげ?」
どういうこと?
一瞬目が合ったが、静かに桜の木の根の方に逸らされる。何か言う代わりに、柔らかく微笑んでいた。
私は知らない間に、彼を守っていたのだろうか。ちゃんと守れていたのだと、自信を持っていいのだろうか。



