君待ち人







「名前が『桜』だから?」


「それもありますけど、一番は初恋の人と約束を交わした季節だからです」




春をイメージすると真っ先に、しーくんに『大好きだよ』と言われたシーンが過る。


その次に、この公園で初めて凪雲先輩と出会ったシーンに切り替わるんだ。




春は出会いと別れの季節だけれど、涙ばかりじゃない。


涙と同じくらい、笑顔もこの桜のようにほころぶ。




「さよなら」の数だけ「初めまして」がある。

見送る背中が多い分、迎える姿も多い。




春は、旅立つ季節。そして、何かが始まる季節だ。



春は、街だけでなく心までも、桜色に染めていく。




春が好きだ。

春は私を希望で満たしてくれる。





「凪雲先輩は?」


「俺も、好きだよ」




凪雲先輩は一歩下がり、一輪の桜から桜の木全体を見上げた。


私も真似て後退してみる。

視界いっぱいに広がるのは、優しいピンク色のつぼみ達。