「あっ、咲いてる!!」
指差す先には、一輪の桜が咲いていた。周りのつぼみを先導するみたいに、綺麗に。
春の訪れを示唆している。
「なんでこの花だけ咲いているんでしょうね」
「わからない。だけど、ひとつだけでも綺麗だな」
「はい、そうですね」
たったひとつのか弱い花に、私と凪雲先輩はふわりと笑った。
どうして、とか。なんで、とか。
頭に浮かんだ疑問が、緩くほどけていく。
残ったのは、桜の花の美しさだけだった。
「桜ちゃんは、春は好き?」
凪雲先輩の視線は、桜という名前の私ではなく、目の前の可愛らしい桜に独占され続けている。
「はい、好きです」
私も桜に目を奪われながらも、答えた。



