凪雲先輩は語り終えた後、桜の木と同じリズムで揺れる眼差しを天に伸ばした。
「休みの日は公園じゃなく、病院に行くんだ。平日はこの公園にいるけど、せめて休みの日だけはそばにいたくて」
曖昧な約束に馳せた、待ち人を待つ明確な理由。
胸の内に、苦しさが染み渡る。
「そんな事情があったんですか……」
だから夏休みはここには来ず、病院で看病してあげてたんだ。
平日は待ち人を待ち、休日は待ち人を支える。
だけど、海さんが眠っているのは、あなたのせいじゃない。
そう言いたいけど、言えなかった。
きっと私がいくら第三者の言葉を送ったって、彼は自分を責め続ける。
海さんが、目を覚ますまでは。
「この前海さんを見た時は、酸素マスクしてませんでしたけど……」
「もう体は治ってるんだ。あとは、目を覚ますだけなんだよ」
まるで、眠り姫のようだ。
彼は今まで、もどかしい時間の中で待ち焦がれていたんだ。