君待ち人





笑われたことに対抗するみたいに、いつもより強めな口調で言ったみた。



凪雲先輩は一瞬キョトンとしたが、また同じように微笑んだ。




なんて柔らかい表情なんだろう。


まるで、小さな子どものような無邪気ささえ感じる。




「桜」


「……っ!」




麗らかに、甘く、けれどどこか影を匂わせて、名前を囁かれた。



本当に呼ばれるとは、想定していなくて。

条件反射で、凪雲先輩を見ていた眼差しを足元に急降下させる。


きっと私の顔は、リンゴも顔負けの赤さだろう。





男の子に「桜」って呼び捨てで呼ばれたのは久し振りだから。


だからこんなにも、体が熱くなるんだ。



私を呼ぶ彼の声が、表情が、あまりにも優しいから。



だから……っ!




いくつも、いくつも、顔が赤くなる理由を並べて、脳内をいっぱいにした。


悔しいな。私は呼び捨てで呼べなかったのに。