君待ち人






凪雲先輩を好きになった経緯をほぼ全て語り終える頃には、青空は茜色を差していた。



「今まで黙っててごめんね」


「いいよ。友達にだって言えないことはあるもん」



ずっと私に注がれていた緋衣ちゃんの視線が、不意に真上に誘われた。



大切な友達だから、きっと明かせなかった。


つい最近まで自分でもわからないことばかりだった感情を、友達に話せる余裕なんてなかったから。



それに、二人きりの時間を特別なものだと思い込みたかった。


友達にも話さない秘密として、宝物に触れるように独り占めしていたかったのかもしれない。



「あたしもね、桜に何度も『好きな人がいるんだ』って相談したかった。だけど、冷やかされて、どうでもよく思われたらどうしようって、ためらってた。桜はそんなことしないってちゃんとわかってたのに、相談できなかったの」



緋衣ちゃんは、屋上に来る前に菓子パンの屋台で購入したメロンパンを、袋から取り出した。メロンパンを見つめながら、はにかむ。



「誰にも相談できなかったけど、毎日メロンパンを食べて元気を出してた」


「なんでメロンパン限定なの?」


「彼氏の家はパン屋で、彼氏もパン職人を目指して今頑張ってるんだけど、あたしが落ち込んだ時にいつもメロンパンをくれるの。一番得意で、大好物なんだって。そのことを知って、元々メロンパンが好きだったけど、もっと好きになった。それから、メロンパンばっかり食べるようになったんだ」




恋人同士で「好き」を共有するのは、憧れる。


あぁ、でも、私と凪雲先輩もある意味共有していた。待ち人を待ち焦がれる、約束という存在を。



「告白できたのは、桜のおかげなんだよ」


「私の?」


「そう。桜が初恋の男の子を待つって決めて、最初はぶっちゃけ無謀だと思ってた。だけど、桜のあきらめずに信じ続ける姿に、あたしも頑張らなきゃって思えたの」



私が、緋衣ちゃんの背中を押していたの?



「だけど、今の桜からは、頑張らなきゃって思えるような力強さを感じない」



揺るぎない叱責だった。


喜色が一気に剝がれ落ちて、錆びていく。




自分の中に閉じ込めていても、心はぐちゃぐちゃに絡まり、ほつれる一方で、何一つ解決しなかった。


嘘をついて、欺瞞するほかできなかった。

何もできないことが虚しくて、最低な行為をし続けて、どんどん自分を嫌いになる。



それが嫌で、自分を好きになりたくて。だから、打ち明けたんだ。