君待ち人






賑わう文化祭の空気感を抜け出して、静寂をたどっていく。気づけば、屋上まで来ていた。


本当は今日は立ち入り禁止なんだけど、黙って侵入しちゃった。



涼しい風が吹く屋上で、私と緋衣ちゃんの二人はフェンスに背をもたれかからせた。



「気持ちいい……」



緋衣ちゃんの細い髪を、微風がさらう。



これから想いを打ち明けるというのに、私の心臓はやけに落ち着いていた。

隣の緋衣ちゃんも、普段通り。


まるで、いつもの昼休みみたいで、心地よい。




ほのかな沈黙を漂わせた後、「あのね」と話しかけた。



「何?」


「私、凪雲先輩のことが好きなの」




横目に緋衣ちゃんの驚愕した形相が見えた。が、緋衣ちゃんは「うん」とだけ相槌を打った。


それは決して無機質ではなく、様々な感情を堪えた上で、まず私の話を聞こうという意思表示だった。




「実はね、初恋の男の子を待ってる時、公園には私一人じゃなかったの。隣にはいつも、凪雲先輩がいた」



少しずつ、少しずつ。

遠くから聞こえるハイテンポな文化祭のBGMにそぐわない、スローペースでさらけ出していった。



四月からの出来事を自分の言葉で説明するのが難しくて、幾度となくつっかえた。

語彙力のない拙い表現でも、緋衣ちゃんは「うん、うん」と真剣に聞いていてくれた。