私は凪雲先輩との間を少し空けて、ベンチに腰掛けた。
特に話す話題もなければ、それほど親しいわけでもない。
ただ何も喋らず、待ち人を待つ。
凪雲先輩との間にある、数センチの距離と沈黙は、たいして苦しくはなかった。
「凪雲先輩は……」
「呼び捨てでいいのに」
私の言葉を軽やかに遮られる。
昨日の今日で、「凪雲」と呼び捨てにできるような勇気は、さすがに持ち合わせていない。
“凪雲先輩”という呼び方も、私的には頑張っているほうだ。
「な、な……凪雲……先輩は、」
ささやかな勇気を振り絞り「凪雲」と呼ぼうとしたが、やはり無理で。
結局、最後に「先輩」とつけてしまった。
隣から穏やかな失笑が漏れた。やや気恥ずかしくなって、身を縮める。
「わ、私のことも呼び捨てで構いませんよ?」



