二人の悲嘆に暮れた声が、虚しく響く。
あの眠っている女の子は、海っていうのかな?
海という名の女の子は、酸素マスクはしていない。
ただ眠っているだけ。私にはそう見えた。
凪雲先輩は、眠っている彼女のことを待っているのだろうか。
あの真っ白な箱庭に、それ以上は無断で踏み込んではいけないような警告音が脳裏でガンガン轟いていた。
扉をゆっくりと音を立てずに閉める。
深い事情は、凪雲先輩の口から聞かなくちゃ意味がない。
ストーカーまがいな行為をしておいて今更だろうけど、これ以上の詮索はやめよう。
許されないことをしているって、十分理解している。
だけど、これでようやく彼の心の前、境界線の一歩手前までは近寄れただろう。
「凪雲先輩、大丈夫かな……」
病院を出て振り返り、三〇五号室がある辺りを見据えた。
彼の心が壊れる前に、境界線を越えなければ。
私は前を向き、歩き始めた。
真実を知る怖さと、震える心を抱きしめながら。



