「俺が、『しーくん』なんだよ」
しーくん。
それは、前に見た夢に出てきた、誰かの名前だ。
日にちが経つにつれ、夢を見たことさえも、思い出せなくなっていった。
案の定未だに、約束をした男の子の名前も、姿も、顔も、まったく思い出せていない。
けれど、ゆびきりげんまんをして約束を交わしたことと、「しーくん」という愛称だけは、頭にこびりついて消えなかった。
「俺が……」
瞳に、涙の膜が張る。
力の入らない身体に、白河くんの囁きがクリアに響き渡った。
「俺が、お前が待ってる『初恋の男の子』なんだよ」
――そうだ。
しーくん。その呼び名が誰のものか、なぜ教えられるまで忘れていたんだろう。
私にとって、唯一無二の大好きな名前だったのに。



