会長はらしくなく取り乱していた。
最後まで紡がれない、未完成な言の葉が届くより早く、凪雲先輩はベンチから立ち上がった。
私一人だけが、この状況についていけていなかった。
呆然としてる私には目もくれず、慌ただしく横を通り過ぎていった。
凪雲先輩の後を追うように、会長も公園を離れ、駆けていく。
二人が去り、私はここに取り残された。
……あんなに焦っている会長も、切羽詰まった凪雲先輩の表情も、今まで見たことがない。
会長の知らせを聞いた時の彼は、ひどく狼狽していた。それに、私もここにいたことを簡単に忘れられるほど、『必死』だった。
「……あれ?」
ポタリ。スカートに、雫が滲んだ。
なんで私、泣いてるんだろう。
泣く理由なんて、どこにもないはずなのに。
次から次へとこぼれ落ちる涙は頬を伝って、唇の上を滑った。ちょっとしょっぱい。
なぜか、苦いレモンの香りが鼻の奥を抜けていく。
ぐちゃぐちゃな泣き顔を、両手で覆った。
心臓が抜き取られたかのような激痛が、むしろ愛しかった。



