「な、凪雲先輩の夏休みは、どうでしたか?」
「……必死だった」
私の知らない未知の場所から、ようやく視線が外れ、自分の手元に落とした。
彼の呟きが、鼓膜を通り抜けて、ぼやける。
必死……?
何に必死だったんだろう。
それは夏休みに通っていたところや、彼の約束に、関係があるのだろうか。
「桜ちゃんは?」
私に向けられた笑顔が、あまりに完璧で、それが逆に怖かった。
トン、と指が当たれば一瞬で心ごと潰れて、粉々に壊れてしまいそうで。
「私は……寂しかったです」
ここにあなたがいなくて。ここに約束を交わした男の子が来なくて。
毎日が単調としていて、退屈で、つまらなかった。



