「凪雲先輩は、夏休み、どこか行ったんですか?」
「俺は……行ってないかな」
「えっ、そうなんですか?どこにも?」
「毎日、同じ場所に行ってた」
凪雲先輩は、また遠い場所を見つめた。
おそらく、その瞳の先には、夏休みに通っていたという場所があるのだろう。
……それって、さっき言ってた「別のところ」?
「毎日、ですか?」
「ああ、毎日」
その遠い場所から視線が外れることはなかった。一ミリたりとも。
公園の代わりに、毎日通ってたんだ。
そんなに、大切な場所なのかな。
チクリと、小さな針のようなものが胸に刺さった。
凪雲先輩を一見する。
儚い桜みたく、あっけなく散ってしまうんじゃないかってくらい、切なそうだった。
凪雲先輩が桜のように、散っていくはずないのに。消えるはずないのに。どうしてそう感じるんだろう。
彼は私の知らないところで、理不尽な現実と戦っているのかもしれない。



