君待ち人





彼曰く、約束は時間とともに人の記憶からも心からも消え去って、忘れられていくもの。


私もそのとおりだと思う。それほど、人の記憶というのは脆く危うい。




だけど。



「大切な約束だったら、忘れたくても忘れられない存在になります」



今もなお、私の心に咲いているこの想いを添えて、私の記憶にははっきりと昔の約束が残っている。



あの男の子と交わした、あの大切な約束だけは忘れたことなんて一度もない。


男の子の名前も顔も姿も、もうぼんやりとしか思い出せないけれど。





「副会長も、そうなんじゃないんですか?」




大切な約束だから、こうやって誰かを待ち続けている。


会いたいから、約束を果たしたいから……だから待っているんでしょう?




春の桜は、確かに淡く、すぐ散っていく。

だけどその分、誰かを魅了して、記憶の中に保存される。



そうやって、人と心を繋いでいくんだ。





「……そうかもね。忘れるなんて、できないよ」



副会長の独白はあまりにもか細すぎて、私の耳は拾うことができなかった。