無理して笑顔を作る彼の姿が、痛々しくもたくましく見えた。
どれだけ傷を負っても、苦痛が襲っても、彼は待ち人を待つのをやめないんだろうな。
「凪雲先輩は、」
「ん?」
辛くないんですか?
おそらくそう尋ねても、返ってくる答えは「辛くない」の一択なんだろう。
わかりきっている答えをわざわざ言わせたくなくて、生唾と共に言葉を呑み込んだ。
「……いえ、なんでもないです」
凪雲先輩の心の皿に、カカオ豆よりビターな気持ちを溢れさせているのは、紛れもなく私だ。
私がいつも余計なことを言って、彼を傷つけている。
「……桜ちゃん」
「はい……?」
「桜ちゃんがここで一緒に待ってくれてるだけで、心が晴れるんだ」
今度は、作り笑顔じゃない、本物の笑顔だった。
大人びた雰囲気を纏った、穏やかな笑顔。まるで、私が言いたかった言葉を汲み取って、自分の傷を自分で治しているようだ。



