凪雲先輩は雲から私へと視線を移して、優しく語りかけるようにそう言った。
自分の中の、大切な記憶……。
凪雲先輩の言葉に、私のモヤモヤしていた心がスッキリした。
「凪雲先輩も、そんな夢を見るんですか?」
私はそう言ったあと、ハッとした。
私……見たじゃん。
彼が夢でうなされていたところを、私見たじゃん。
私の心は、すぐに暗くなった。
「……うん、見るよ」
凪雲先輩は目を閉じて、小さく頷いた。
何かを思い出しているような様子で、私の胸が痛んだ。
この前うなされていた夢が、彼の大切な記憶の一部なら。
今その記憶の情景を、そのまぶたの裏に移しているのだろうか。
「俺の場合、その夢は覚えてるけどね」
凪雲先輩は私に作った笑顔を向け、そう付け足して言った。
あんなに苦しそうに見ていた夢を、覚えてるんだ。
きっとその分、彼の心は傷だらけなんだろう。



