君待ち人








夕日が嗤う、放課後。


若葉公園では、凪雲先輩がベンチに座っていた。




「こんにちは、桜ちゃん」


「こんにちは、凪雲先輩」




私もベンチに腰をかけ、だだっ広い空を仰いだ。



あの青空は、夢に似ている。


遥かかなたにある空も、真夜中に弄ぶ夢も、誰もが知っているのに、誰もが触れたことがない。


あんなに遠いのに、たまに近いと感じて手を伸ばしてみるけれど、やはり届かない。




そういえば、昼休み見た夢について、思い出せないままだったっけ。よし。諦めきれないから、再挑戦してみよう。




しーくん。

誰のかわからない名前しか、思い出せない。



しーくんという名前は、耳に、口に、どこか馴染む。ノスタルジックな響きが、涙を誘う。



理由などまったく見当がつかないけれど、夢にその名前が関わっていることは、直感的にわかった。





「凪雲先輩は、夢ってどう思います?」


「夢?」



「はい。夢って、起きたら忘れちゃうじゃないですか。その夢を、思い出すことってできるんでしょうか」




私は凪雲先輩に視線を向けることなく、空を眺め続けた。