「三吉さんは?」
「わ、私は、好きな人を……初恋の人を、待っているんです」
急に恥ずかしくなって、頬を赤らめた。
地面を彩っていた桜の花びらが、唐突に吹いた風とともに舞い上がる。
花びらはふわりふわりと空を踊った。
とても嬉しそうに、幸せそうに。
「来るといいね」
「はい」
副会長の待ち人は、一体どんな人なんだろう。
少しだけ、副会長のことが気になっていた。
それは恋とか憧れとかそういうものではなく、ただの好奇心。どこにでもある興味だろう。
「約束ってさ」
副会長は足元に転がる一枚の花びらを拾った。
「この桜の花びらみたいに、人の記憶から簡単に散っていく存在なんだよ」
手にした花びらに、フッと息を吹きかける。
花びらは宙を泳いで、なだらかに落ちていった。



