君待ち人





楽しければそれでいい。今の今まで、ふわふわとした曖昧な考えで、埋め尽くされていた。


だけど、お母さんから告げられた事実は、その考えをいとも簡単に砕いてしまう。




『しーくん、ここからいなくなっちゃうんだって』


『………』


『引っ越しちゃうんだって』




何の反応もない私に、聞こえていないとでも思ったのか、もう一度繰り返した。


いなくなっちゃう?何それ。




『もう、会えないの?』


『そうねぇ……。毎日遊ぶのは、難しくなっちゃうわね』



『……そんなの……っ、そんなの嫌だ!』




私は大声を出して、自分の部屋へと駆け込んだ。



お母さんに反抗しても、怒鳴っても、逃げても、意味なんかないのに。



自分の部屋に入った私は、ポタリポタリと大粒の涙をこぼしていた。




しーくんに会えなくなる。

しーくんのそばにいられなくなる。




そのことがすごく嫌で、悲しくて、寂しくて。


この前もらった、大きな大きなくまのぬいぐるみに顔を伏せて、一晩中泣いていた。





『しーくん……っ』



大好きな人の名前を、何度も口にしながら。