『僕も、桜ちゃんのことだぁいすき』
しーくんはそっと優しく抱きしめ返してくれた。
触れ合う部分から、温もりと、感謝と、ピュアな気持ちが溢れる。じわじわと伝わってくるそれらが、全て大切すぎて困ってしまう。
麗らかな春の桜が、私としーくんを見守っていた。
それから数日後。
その日もしーくんと一緒に公園で遊んだ。
空に夕日が昇り、オレンジ色に染まってきたことに気づいて、私達は帰路についた。
『桜』
『ただいま』と家に帰ったことを報告すれば、お母さんに私の名前を呼ばれた。
その声色は、いやに悲哀で満ちていた。
子どもながらに、私は不穏な何かを感じ取った。
嫌な予感。
その何かに名前をつけるなら、きっと、それ。
『実はね………』
お母さんの言葉を聞いて、初めて現実を見たような気がした。
初めて、現実と向き合ったような気分になったんだ。



