「あ………っ、」
「なに?」
「い、いや、なんでもねぇ。悪いな、引き止めちまって。今日はマジでありがとな。じゃあな、三吉」
一瞬、何か言いたそうに口を開いたけれど、すぐにその口は閉じられた。苦しそうな笑みを浮かべて、私の腕から手を離す。
何を、言おうとしたんだろう。
「う、うん。またね」
私は悩んだが、深く聞くことはしなかった。
二度目の別れの挨拶を告げて、今度こそ教室を出た。
なんだろう。
胸が、ざわつく。
廊下におぼろげに伸びた自分の影が、過去の残り香を纏って、私を嘲笑っているようだ。
教室に一人残った白河くんは、唇を噛み締め、ググッと爪痕が残るくらい拳をきつく握り締めていた。
白河くんはきっと、私には言えない、秘密を抱えている。
私はそれがなんなのか、やけに気になった。



