『勝手にこんな遠くまで行って!ほら、帰るわよ!』
お母さんが、あたしとお兄ちゃんの手を引く。
『待って!まだ“白い花”摘んでないよ…』
『何おかしなこと言ってるの。もう遅いから帰るわよ。』
沈んだ気持ちで後ろを振り返ると、“白い花”はもう見えなくなっていた。
あれは、幻だったの…?
でも、確かにあたしたちは見た。
あの日、感動したことを今でも覚えている。
あの日以来、白い花の話はしなくなったけど、きっとお兄ちゃんも覚えてるはず。
あたしも、お兄ちゃんも、由陽さんも大好きな“白い花”…
ふと、あたしは我に返った。
「そうだ…良いこと思いついた!」
あたしは手に持っていた絵本をしまうと、尚陽くんに電話をかけていた。


